更新日: 2012年11月22日
高校を卒業して実家を離れる時、お母さんとたくさん話をした。
その時初めて自分の生まれた時の話を聞いた。
私がお腹の中にいた時、お母さんの子宮に病気があることが判明した。
癌だった。
一歩間違えればお母さんも私も死んでしまうかもしれないような状況。
医者の先生は堕胎して病気の治療に専念するようにすすめた。
お父さんも、お母さんの体が第一だからと、先生の考えに賛成だった。
だけど、二度の流産を経てようやくまた授かった命だから、死なせたくはないんだと、お母さんは堕胎を拒否した。
妊娠中はずっと入院生活。不安な日々が続いた。
そしてその日、
私は無事に生まれた。
お母さんは併発した病気による大量出血で生死の淵をさまよい、そのまま手術になった。
やっと目が覚めて私を抱けたのは、一週間後だった。
その時に先生から驚くような話を聞かされた。
「病気が、なくなっています。信じられませんが、赤ちゃんが一緒に体の外へ引っ張り出してくれたようです」
お母さんは私に言った。
“あなたは私の宝物であり、命の恩人なのよ。
生まれてきてくれてありがとう”
私は涙が止まらなかった。
普段は照れくさくて言えないけれど。
生んでくれてありがとう、
私の命を、
諦めないでくれてありがとう。