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更新日: 2012年10月31日

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私が20代の頃、橋本さんの喫茶店の常連でした。
時間があれば、橋本さんのお店で、サイフォンでいれてくれるコーヒーを飲みながら、話すのが好きでした。

その頃たぶん40才に近かった橋本さんは、姉妹が居ない私には、優しく厳しいお姉さんの様でした。
落ち込んでれば励ましてくれ、怠けると怒られ、どうでもいい人間関係にグダグダ悩む私に、何がだいじなの?と問うてくれました。
恋に悩んだ時は、さっさと行動しないと誰かにとられるぞ。と背中を押してくれました。

その後私は、背中を押してもらった彼と結婚し、橋本さんの喫茶店から職場が遠くなり、橋本さんと私は、年賀状のお付き合いになりました。
年賀状で子供が生まれたことや成長を報告しながら、会いに行きたい、会いに行かなきゃと思いながら、月日が過ぎました。
橋本さんの年賀状は毎年、いろんな花をキレイに版画して作ったものでした。

2008年のお正月、橋本さんからは年賀状が届かず、橋本さんのお姉さんから、ハガキが届きました。
橋本さんは、癌で亡くなっていました。
何年も会いに行かなかったことを後悔し、ハガキを送ってくださったお姉さんに、手紙とお線香を送りました。

お姉さんからお返事をいただきました。
橋本さんとお姉さんは、ご家庭の事情で高校生の頃から別々に暮らしている、複雑な関係だったそうです。
そんなこと、全然感じさせない強い人でした。私が若くて、甘えていて、そんなこと見えなかったのかも知れません。
お姉さんからの手紙には、橋本さんが2008年のお正月の為に準備した、チューリップの年賀状が同封されていました。
年末には準備が出来ないと思っていたのか、2007年の春にはもう、その年賀状を作ってあったそうです。

近頃、秋の青空を見ると、橋本さんのことを想います。
橋本さんが私を見ててくれるなら、夜の星空からじゃなくて、こんな青空からだろうな。
橋本さん、子供の顔を見せなかった。ごめんなさい。
会いに行かなくて、ごめんなさい。

こんな後悔はしない様に生きなきゃと、今でも橋本さんに教わっています…。